おみくじと日本の紙文化
hamaguchi神社・仏閣で吉凶を占う籤、皆さんも一度は手にしたことがあるはずです。厚み50~70g/㎡の薄手の紙に古からの日本の紙文化を感じてみましょう。
みくじ箋の歴史
くじはもともと占いの一種とされ古くは日本書紀にも記されています。当初は「みくじ棒」で参拝者の吉凶を占っていましたが、江戸時代に入り予め折りたたまれた「みくじ箋」が使われ始めました。
境内の木やみくじ掛けにみくじ箋を結ぶ「結びつけ」という風習も「縁を結ぶ」という縁起を担いだ江戸の庶民から生まれたようです。
それでは、一般的に紙が使われ始めた江戸時代の紙事情は、どうだったでしょう。
江戸の紙事情
江戸文化に造詣の深い作家 石川英輔氏は、江戸時代の日本は「紙使用大国」であったと語ります。それは江戸時代後期に日本に訪れた西洋人の記録に、日本人が紙を大量消費する場面に出会い驚く場面が度々記されているからです。ヨーロッパでは、18世紀半から19世紀にかけて産業革命が起きています。抄紙機も今と同じ原理のものが蒸気機関で稼動していましたが、多額の投資を必要とする紙はかなり高価で庶民が使い捨てるような商品ではなかったのです。これは1613年にヨーロッパに親善使節として派遣された伊達藩の一行が使い捨てた鼻紙を見物に集まった人々が争って拾ったという史実からも伺えます。
とはいえ江戸の人々が紙を粗末に扱っていたわけではありません。すべての紙が手漉きあった時代、紙は今より貴重であり、古紙の回収もひとつの産業として成り立っていました。放っておけば朽ちてします紙を拾う仕事があり、資源の再利用と町の清掃を同時にやっていたのだから、徹底したリサイクル構造の社会だったと言えましょう。
紙と木の家
伝統的な日本建築は木がふんだんに使われ、空間は障子、襖、屏風といった紙物で仕切られています。機密性は今の住居の比ではないくらい、筒抜けであったでしょう。人々は隣の人の良心を信じ「見ても見ぬふり」「聞こえても聞こえないふり」をして、お互い譲り合っての生活が想像できます。落語や歌舞伎の人情噺の背景は、こうして培われていったのではないでしょうか。
昨今、デザイナーやクリエーターが指定する紙の中にも、おみくじ箋から始まる日本の紙文化DNAが息づいている気がします。最後に弊社が勝手にお奨めするおみくじ箋用紙をご紹介し、終わりにしたいと思います。
現代おみくじ考
おみくじ箋に求められる紙質とは何でしょうか。神社のおみくじは広げて58x235㍉が最も多い寸法です。それが13分割され58x18㍉に折りたたまれます。まずは、適度な薄さと折に対する耐久性(耐折適正)が必要です。次に片面2色(Bk+M)に対応する印刷適正。大切にしたいのは、パルプ繊維が手に直接伝えてくる温もりです。非塗工紙が好ましいですね。
それらを加味して勝手に選んだ紙は
日本製紙 白銀(しろがね) 四六判Y目 38.5kg
蛍光染料無添加ですが鮮やかなな白さが映える片艶クラフト紙です。45g/㎡の薄さながら、しっかりとした耐折適正が感じられますので「結びつけ」も滞りなく、良いご縁が結べそうです。
よりテクスチャを感じたい方には
王子エフテックス モフル ミルク 四六判Y目 60kg
なんていかがでしょう?「味わいが感じられて、ちゃんとハリもある紙にしたい!」というデザイナーの願いが詰まった紙です。商品名のとおりモフモフとした紙面を触っていると幸せな気分となり、小吉を引いても大吉に2ランクアップすること間違いありません。
2020年のオリンピックイヤーに向けて、神社仏閣に訪れる海外観光客も増えると思われます。手にされる「おもてな紙」の一つとして、おみくじ箋を今一度考えてみてはいかがでしょう。
Facebookで更新情報をチェック!
Category
- 制作事例 (22)
- イベント (13)
- ノベルティ (10)
- トップページ (8)
- 紙の知識 (8)
- 本 (6)
- 無駄にしない (4)
- 見本帳 (3)
- 海外のペーパーコミュニケーション・ツール (2)
- キャラクター (1)